プレスリリースPRESS RELEASE



(博士課程)医療科学専攻 理学療法学分野
 Department of Physical Therapy Science, Medical and Dental Sciences
(修士課程)保健学専攻 理学療法学分野
 Department of Physical Therapy Science, Health Sciences


2022.3.10
脊椎圧迫骨折による急性腰痛が持続する高齢女性の抑うつ,破局的思考,およびパフォーマンスの低下について

研究紹介

入院加療を必要とした新鮮脊椎圧迫骨折(圧迫骨折)患者に対しては,保存療法が第一選択となりますが,強い腰背部痛が持続するケースは少なくありません.また,このようなケースは慢性疼痛を発症し,ADLや運動機能が低下するリスクを抱えていると考えられます.しかし,強い腰背部痛が持続する圧迫骨折患者の特徴は明らかでなく,具体的な対策を講じるには基礎データに欠けているのが現状です.そこで,本研究では,強い腰背部痛が残存する圧迫骨折患者の特徴について多面的に検討しました

研究のポイント

急性腰背部痛が持続する患者では,抑うつや破局的思考の改善が得られにくく,筋力や運動耐容能が低下していました.

研究内容

<方法>
対象:2014年5月~2019年5月までに新鮮脊椎圧迫骨折を受傷し,当院に入院後,保存療法を施行した患者としました.
保存療法の流れ:受傷・入院後,鎮痛薬処方し,1週程度ベッド上リハを実施します.その後,装具装着し,離床を開始し,ADL・IADL練習を中心に介入します.
評価項目と時期:表1に示す評価をリハ開始時,リハ開始2週目,4週目に行いました.

 表1 本研究で用いた評価項目

分析:リハ開始4週目のVRSが2~4の腰背部痛が強いSevere groupと0~1の腰背部痛が弱いMild Groupに分けました(Goto K, Kataoka H, et al. Factors Affecting Persistent Postoperative Pain in Patients with Hip Fractures. Pain Res Manag 2020; 2020: 8814290. doi: 10.1155/2020/8814290).
統計解析:反復測定二元配置分散分析(Post hoc解析,Sheffe法),有意水準5%未満

<結果>
131例が研究対象となり,Severe groupは 64例,Mild groupは67例となりました.Mild groupと比較してSevere groupは有意にリハ開始2週目,4週目のVRS,PCS,GDS-15とが高値でありました(図1).また、身体パフォーマンスにおいて,Mild groupと比較してSevere groupはリハ開始2週目,4週目の5回椅子起立時間の所要時間が有意に高値で,6MWDは有意に低値でありました(図2).一方, FIMおよび椎体圧潰に有意差は認めませんでした(図3).
 
 
 

研究の意義

本研究の結果から,急性痛が持続する圧迫骨折患者は痛みのみならず抑うつや破局的思考に加え,身体パフォーマンスも低下していることが明らかとなりました.つまり,これらの特徴を持つ患者に対しては通常の保存療法に精神心理面の改善や身体パフォーマンスの向上にむけたアプローチを併用する必要性が示唆されました.



論文情報
Kataoka H, Hirase T, Goto K, Honda A, Nakagawa K, Yamashita J, Morira K, Honda Y, Sakamoto J, Okita M
Depression, catastrophizing, and poor performance in women with persistent acute low back pain from vertebral compression fractures: a prospective study.
Journal of Back and Musculoskeletal Rehabilitation (Accepted 24 December 2021)


問い合わせ先
社会医療法人長崎記念病院 リハビリテーション部 課長
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 理学療法学分野 客員研究員
片岡英樹(カタオカヒデキ)
Tel: 095-871-1515
Fax: 095-871-1510
E-mail: kataoka-hide@kii.bbiq.jp


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