書籍紹介BOOK



(博士課程)医療科学専攻 理学療法学分野
 Department of Physical Therapy Science, Medical and Dental Sciences
(修士課程)保健学専攻 理学療法学分野
 Department of Physical Therapy Science, Health Sciences
  フレイル高齢者の関節可動域
 ケアの指標としての活用
出版社:三輪書店
編集:福田卓民,沖田 実
発行年月日:2023725
ISBN978-4-89590-792-7 C 3047
価格:3,600円+
 この度,青梅慶友病院(東京都)と当研究室との共同研究の成果でもある本書を上梓した.本書は2016年に上梓した「エンド・オブ・ライフ ケアとしての拘縮対策―美しい姿で最期を迎えていただくために(三輪書店)」の続編であり、その後に得た4,000名を超えるフレイル高齢者のデータが何を示し、何を意味するのかを問う機会とした.
 具体的に,本書は第1章で関節可動域に対する考え方を述べ,フレイルや関節可動域制限の定義・病態を整理したうえでフレイル高齢者の関節可動域データを提示し,本書の骨子を述べている.第2章では看護とリハビリテーション,そしてレクリエーションの視点から,具体的なケアのあり方と介助方法および余暇活動の必要性について概説している.第3章では各病期におけるリハビリテーションの役割とそのエビデンスを紹介し,現状の課題と今後の展望を述べており,リハビリテーション専門職以外の職種にも参考になると思われる.第4章では関節可動域制限以外の機能障害について整理するとともに,対策の基本となる身体活動の意義や重要性を提示し,フレイル高齢者特有の5つの症状を取り上げ,関節可動域との関連性についても検討している.これまで症状別に対応されてきた機能障害であるが,今後は並行して発生・進行するものと認識を改め,その効果検証が不可欠であることを共有できればと考えている.第5章では❝大人の嗜み❞と称して,「心を動かし,身体を動かし,生活を活発化する」ことが,高齢者の身体活動を維持・向上させる方法であると述べている.そして第6章では,長年にわたりフレイル高齢者の関節可動域についてデータ分析を続けてきた青梅慶友病院の吉際氏が終末期の臨床を担う者としての思いを述べ,最後は小生からの研究・教育・臨床に対する提言で本書を締めくくった.
 「関節可動域制限」は関節に生じた機能障害に過ぎない.しかし,フレイル高齢者の場合,それは日々の生活を示したシグナルでもある.つまり,生活に結び付く関わりを実践している以上,身体機能を専門としない職種や立場であっても関節可動域制限に対峙する責務があり,そのことからも「関節可動域」という身体機能が,自らの対応の是非を反映する貴重な情報の一つであると,職種を問わず理解・認識されることが望まれる.本書がそのことを考えるきっかけになれば幸いである.

(本書のまえがきより抜粋・一部改変,文責:沖田)



  運動器の傷害と機能障害
―その病態とメカニズム
出版社:三輪書店
著者:沖田 実,坂本淳哉
発行年月日:2021320
ISBN978-4-89590-720-0 C 3047
価格:4,200+
 この度,研究室のメンバーとの共著で「運動器の傷害と機能障害ーその病態とメカニズム」と題した書籍を 上梓した.本書は理学療法学教育モデル・コア・カリキュラム(日本理学療法士協会,2019年発行)の中の「基礎理学療法学」の学修内容に準じたものであり,そのため,通常の講義の時間数(90分×15回)を想定し,15章の構成としている.具体的に1章(総論)では,リハビリテーション医療の対象となる運動器の傷害ならびに機能障害の発生状況の実態を紹介し,傷害と機能障害の因果関係について解説している.続いて2章(炎症)と3・4章(疼痛)では,どのような組織が傷害を受けても共通して発生する症候をまとめており,これらの章は以後の10章までの内容を理解する上での基礎となる部分でもある.ただし,疼痛に関しては症候として発生するのみならず(急性痛),それ自体が機能障害あるいは疾病に発展する(慢性疼痛)ことも解説しており,運動器の機能障害としての位置付けにもなっている.そして5章~10章(創傷,靱帯損傷.腱損傷,骨損傷,末梢神経損傷,筋損傷)では組織区分に基づき傷害の病態とメカニズムを解説している.なお,創傷は運動器の傷害には含まれないものの,熱傷と褥瘡といった創傷はリハビリテーション医療の対象であり,しかもその治癒過程のメカニズムは靱帯や腱,骨など,結合組織で構成される組織にも普遍化できることから,本書では取り扱っている.続いて11・12章(筋力低下),13・14章(関節可動域制限)では,典型的な運動器の機能障害を取り上げ,その病態とメカニズムを解説している.そして,最後の15章(フレイル)では,高齢社会の到来によってリハビリテーション医療の対象患者の多くが高齢者であることを踏まえ.高齢者の健康問題の基盤にあるフレイルを取り上げ,これが運動器の傷害ならびに機能障害の発生に深く関与していることを解説している.
 是非,読者の皆様には傷害に関しては治癒のメカニズムを,機能障害に関しては発生のメカニズムを理解していただきたく思っている.なぜなら,リハビリテーション医療には傷害の治癒促進を図り,機能障害の発生を予防する重要な目的があり,そのための適切な介入戦略を選択,実践する上では,上記のメカニズムの理解は不可欠だからである.未だに臨床で目にする旧態依然の対症療法的な介入戦略からの脱却を図り,メカニズムを基盤としたリハビリテーション医療(Mechanism-Based Rehabilitationの実現に向け,本書が少しでも役に立てば幸いである.

(本書の序より抜粋,一部改変,文責:沖田)



  Pain Rehabilitation
―ペインリハビリテーション入門―
出版社:三輪書店
著者:沖田 実,松原貴子
発行年月日:201931
ISBN978-4-89590-634-0 C 3047
価格:3,500+
  この度,盟友である松原貴子先生(神戸学院大学)との共著で「ペインリハビリテーション入門」と題した書籍を上梓した.本書は,2011年から3年間参画した厚労科研(慢性の痛み対策研究事業);「痛み」に関する教育と情報提供システムの構築に関する研究において,理学療法士・作業療法士学生用に作成・公開した教育コンテンツ(https://sv123.wadax.ne.jp/~pain-medres-info/itamikyouiku/)をきっかけとし,最近のエビデンスやガイドラインも踏まえて初学者向けに整理し直したものである.具体的には,「Chapter 1 痛みの理解」,「Chapter 2 痛みのアセスメント」,「Chapter 3 痛みのマネジメント」といった3章からなる構成とし,養成校の学生も含めた初学者が自己学習しやすいように,また,講義する教員もスライドで提示する図表等とその教授内容が一目でわかるように,1枚の図表と2ページ以内の解説文からなる「スライド配付資料風」のレイアウトとしている.また,巻末には「Chapter 2 痛みのアセスメント」で解説している各種の評価票の具体的内容を理解して頂くとともに,臨床の場ですぐに活用して頂きたいという思いから,転載許可された多くの評価票を掲載している.
 周知のように,2010年9月に厚労省から発表された「今後の慢性の痛み対策について(提言)」では,医療者育成のための教育の必要性,重要性が示された.また,2016年以降の「理学療法士・作業療法士国家試験出題基準」では,「慢性疼痛」が解剖学や生理学と同じ大項目に追加され,2019年2月に発表された(公社)日本理学療法士協会「理学療法学教育モデル・コア・カリキュラム」では他の疾患別理学療法学と同程度に疼痛理学療法学の学修内容が盛り込まれた.
 つまり,これらのことは疼痛医学に精通した理学療法士・作業療法士の育成が急務であることを物語っており,本書が少しでもそのお役に立てば幸いである.

(本書の序より抜粋,一部改変.文責:沖田)



  エンド・オブ・ライフケアとしての拘縮対策
-美しい姿で最後を迎えていただくために-

出版社:三輪書店
編集:福田卓民,沖田 実
発行年月日:20141020
ISBN978-4-89590-492-6 C 3047
価格:3,200+
  この度,青梅慶友病院(東京都)と当研究室との共同研究の成果として本書を上梓した.700床を超える療養病床を有する青梅慶友病院は,在宅生活が困難な障害高齢者を最期までお預かりするという方針で運営されている.そのため,入院患者の平均年齢は88歳を超え,平均在院期間は3年以上で,その9割は入院したまま最期を迎えるという.つまり,このようなエンド・オブ・ライフの時期にある障害高齢者にとって関節拘縮(以下,拘縮)は,その最後の姿に直結するばかりか,本人のみならず家族も含めた他者に対してもQOLへの影響が大きいことから,青梅慶友病院ではチームアプローチとして亡くなる最後の時まで拘縮対策が講じられている.このような取り組みは他に類をみないものであり,しかも様々な臨床現場で参考になることが多いと思われる.具体的に,本書は第Ⅰ章でエンド・オブ・ライフの時期にある障害高齢者において,なぜ拘縮対策を講じる必要性があるかを述べ,第Ⅱ章では拘縮の発生要因やそのメカニズムについて,当研究室の自験例に基づいて概説している.そして,第Ⅲ章では青梅慶友病院で収集された関節可動域のデータと多くの写真を盛り込み,障害高齢者が抱える拘縮の具体的な臨床像を示している.また,第Ⅳ章では文献レビューと当研究室の自験例の結果から拘縮に対するリハビリテーションのエビデンスについて述べた上で,療養生活の中で行うリハビリテーションとしての拘縮対策の実際,そして看護・介護の立場から取り組む際の視点など,拘縮に対する幅広い関わりを治療戦略としてまとめている.そして,第Ⅴ章では拘縮を問題視しながらもすぐに対策を展開できなかった当時の青梅慶友病院の問題点と実際の解決策,そして,具体的な対応方法と効果について紹介し,最終章の第Ⅵ章では研究および臨床における今後の課題と展望についてまとめている.このように,本書で紹介している内容のほとんどは青梅慶友病院における日々の対応そのものであり,このようなエンド・オブ・ライフケアの臨床に当研究室の基礎研究の成果が少しでも還元できたことは非常に嬉しいことである.本書を手にされた方の多くは,職種を問わず臨床において拘縮に直面し,解決策を模索されているのではないかと思われる.すべてを解決するような結論を載せられてはいないが,まずはページをめくっていただければ幸いである.

(本書のまえがき,あとがきより抜粋・一部改変,文責:沖田)



  関節可動域制限 第2版
-病態の理解と治療の考え方

出版社:三輪書店
編集:沖田 実
発行年月日:2013年5月20日
ISBN:978-4-89590-435-3 C 3047
税込価格:3,200円 
  2008年1月に初版『関節可動域制限-病態の理解と治療の考え方』を発刊して,早いもので5年の月日が経過した.おかげさまで,初版は多く医療・福祉 専門職者にご愛読頂き,学会や講演会などでは本書に関する貴重なご意見を頂いた.そして,研究面においても本書に関連したテーマはこれまでに6度にわたる 科学研究費補助金の助成を受けてきたが,このことは,関節可動域制限が今なおリハビリテーション科学領域の重要な研究テーマであることを物語っているとい えよう.幸い主宰する研究室においてはこのような多くの研究助成の結果,研究設備の充実が図られ,結果,初版発刊の頃までは着手することができなかった網 羅的な関節周囲軟部組織の検索が可能となり,一部の組織については分子レベルにまでおよんだ検索が開始されている.そこで,今回,初版の内容を精査・整理 し直すとともに,新たな知見を紹介し,関節可動域制限,なかでもその主原因となっている拘縮について,病態や発生メカニズムをこれまで以上に知って頂きた いという思いから第2版を発刊することとなった.
第2版の特徴は,その第1章で関節可動域制限の病態を筋収縮に由来するものと拘縮に由来するものに区分した上で,第2章では拘縮の原因となり得る皮膚,骨 格筋,靱帯,関節包といった関節周囲軟部組織の器質的変化を網羅的に解説している点にある.そして,初版発刊以降の5年間で蓄積した新たなデータを適宜 アップデートし,なかでも皮膚性拘縮の知見は国内外でも初めての紹介となり,加えて,これまで最も精力的に検索を進めてきた筋性拘縮については,分子レベ ルにまで掘り下げて発生メカニズムの解明にチャレンジしている.最後に,第3章においては初版同様に関節可動域制限の各種病態に対する治療効果の検証を試 み,その治療戦略はどうあるべきかを私見も交えながら解説している.このように,第2版は章の構成に加え,その内容についても初版から大幅にバージョン アップしたものになったのではないかと自負しており,関節可動域制限の治療やそのケアにあたられる専門職者の方々の知識の整理に少しでもお役に立てば幸い である.

(本書の第2版の序より抜粋・一部改変,文責:沖田)

  Pain Rehabilitation
―ペインリハビリテーション―

出版社:三輪書店
著者:松原貴子 沖田 実 森岡 周
発行年:2011年5月30日
ISBN:978-4-89590-385-1 C 3047
税込価格:4,410円 
  近年,疼痛学を医学の一領域と位置付ける考え方が受け入れられるようになってきた.疼痛学は非常に幅広い学問領域であり,臨床医学的にみても多数の診療 科に関係し,また臨床家だけでなくさまざまな専門分野の基礎研究者が携わる研究領域でもある.痛みは,老若男女を問わず,また基礎疾患の如何にかかわら ず,多岐にわたる病態概念である.リハビリテーションにかかわる医療者は,これらすべての症例に対峙することになる.米国連邦議会が決議したDecade of Pain Control and Research(痛みの10年:2001~2010年)では,痛みの診療体制の確立や医療者の再教育が謳われている.しかしながら,わが国では疼痛学が 医学・医療教育の中で学問的基礎として位置づけられるには至っておらず,「再教育」というよりも新たに痛みの基礎教育を進めていくことから始めなければな らない状況にある.また,医療保険制度においても,痛みに関する診療が十分に保障されているとは言い難く,まずは集学的な診療体制を構築する出発点に立っ た段階であろう.そのような意味で,わが国のペインリハビリテーション(Pain rehabilitation)は発展途上の段にある.そこで,これまでペインリハビリテーションに関する知見が入門書でも専門書でも整理されていなかっ たことから,現在までの知見を本書でまとめることとした.
 本書は15年来の友人である松原氏(日本福祉大学・教授),森岡氏(畿央大学大学院・教授),そして私のコラボレーション作品で,4つの章で構成してい る.そして,各章において痛みの概要と臨床的概説を松原氏が,痛みと末梢組織,末梢における痛み発生メカニズムおよびその評価とリハビリテーションを私 が,脳における痛み発生メカニズムおよびその評価とリハビリテーションを森岡氏が担当しており,それぞれの専門領域の立場からペインリハビリテーションの 基礎と臨床について解説している.
 本書を手にしていただいた方々のなかで,初めて痛みに興味をもたれた方にとってはペインリハビリテーションの入門書として,一方これまで痛みの診療に苦渋してこられた方にとっては知識のアップデートと打開策の発見のために,本書をご活用いただけると幸いである.

(本書の序より抜粋・一部改変,文責:沖田)

  機能障害科学入門

出版社:神陵文庫
編集:沖田 実 松原貴子 森岡 周 
発行年:2010年6月1日
ISBN:978-4-915814-28-0
税込価格:4,725円
  リハビリテーション医療の目的は,対象者の日常生活活動(ADL)能力を向上させることにあるが,そのためにはADL能力の低下の原因になっている機能 障害(functional disorder)を改善する必要がある.すなわち,リハビリテーション医療従事者であるわれわれが治療ターゲットとしているのは,機能障害そのものであ る.しかし,わが国に理学・作業療法士法が制定されて40数年が経過した今日においても,機能障害に関する教育は十分とは言い難い.確かに,筋力低下や関 節可動域制限などが機能障害の一つであること,また,これらの機能障害の定義・原因などについては系統立って教育を受け,セラピストの共通知識になってい るが,その病態や発生メカニズムにまで掘り下げて教育を受けたセラピストは皆無に等しく,それを実践できるための書籍もなかったのが実情である.しかし, このままではわれわれセラピストは対象者が求めているだけの治療成績をあげることはできず,真の意味でのエビデンス構築もほど遠いと思われる.
 そこで今回,少しでも教育内容の変革の契機につながればという思いから,現段階で明らかになっている機能障害に関する事象を入門書という形で書籍にまと めることとなった.本書は,基本的には理学・作業療法士養成課程の学生向けの書籍であり,特に,専門基礎科目で学ぶ基礎医学や臨床医学と専門科目で学ぶ各 種の治療体系とを結びつけるものとして位置づけていることから,既刊の神陵文庫理学療法学テキストシリーズで好評を得ている短文形式の編集方針を採用し た.しかし,本書の真のねらいはわれわれの治療ターゲットである機能障害に関する最新知見を情報発信し,病態が異なる個々の対象者に対して必要な治療が何 であるのか,その問題解決能力の向上を図ることにある.したがって,これからのリハビリテーション界を担う学生のみならず,現在悩み,疑問をもちながら臨 床の場で奮闘されているセラピストの方々においても,本書の内容が少しでも治療のヒントにつながれば編集を担当したものとして望外の幸せである.

(本書の序文より抜粋・一部改変,文責:沖田)

  物理療法 第2版

出版社:神陵文庫
編 集:沖田 実
発行年:2009年
ISBN:9784915814242
税込価格:4,725円
  本学教授である千住秀明先生が監修をなさっておられる神陵文庫の理学療法学テキストシリーズにおいて、「物理療法(初版)」は1998年5月に発刊さ れ、10年以上の歳月が経過した。この間、物理療法に関する研究、特に基礎研究の領域においては、これまで不透明であった各種の物理的刺激入力による組 織・細胞応答が明らかになり始め、物理療法に関連した新たな知見が数多く報告されている。また、基礎研究によって得られたエビデンスをベースとして開発さ れた物理療法機器も登場してきている。つまり、われわれ理学療法士自身が物理療法に関するさまざまな情報をアップデートする必要があり、これからを担う学 生にそのことを伝える責務がある。そのような意味で、今回、初版の内容をリニューアルした「物理療法 第2版」を発刊した。
 この第2版では、本テキストシリーズのこれまでの方針を踏襲しながら、各種の物理療法をエビデンスに基づいて解説し、さらには各種機能障害の病態を踏ま えた物理療法の実践、すなわち学生の臨床推論能力の向上を強く意識した内容構成に変更した。また、初版で盛り込まれていた「マッサージ」や「リラクセー ション」は、現在の物理療法の枠組みを考慮して、第2版ではこれらを割愛し、代わって基礎研究のエビデンスだけでなく、臨床効果も著しい「持続的他動運動 (CPM)機器」と「振動刺激療法」を追加記述した。加えて、初版から組み入れられていた「主な病態の理解」は、第2版でもこれを踏襲し、第2章「物理療 法の適応の多い病態の理解」として「炎症、組織修復、痛み(急性痛・慢性痛)」を取り上げている。特に「痛み」は物理療法が最も得意とするターゲットであ るものの、物理療法の使い手であるわれわれが痛みの病態そのものを十分に理解していないため、思うような効果をあげられていない。そこで、このことを少し でも打破したいという思いから、第2章では最新の研究成果に基づいて各種病態の解説を行い、加えて、各種病態に対する物理療法の考え方を提示している。
「物理療法 第2版」は物理療法を学ぶ学生のための初学の書としてまとめたものであるが、これからの物理療法のエビデンス構築に少しでも役立てば編集に携わった者として望外の幸せである。

(本書の巻頭言より抜粋・一部改変,文責:沖田)

  関節可動域制限 
―病態の理解と治療の考え方―

出版社:三輪書店
編 集:沖田 実
発行年:2008年
ISBN:9784895902915
税込価格:2,940円
  本学教授である千住秀明先生が監修をなさっておられる神陵文庫の理学療法学テキストシリーズにおいて、「物理療法(初版)」は1998年5月に発刊さ れ、10年以上の歳月が経過した。この間、物理療法に関する研究、特に基礎研究の領域においては、これまで不透明であった各種の物理的刺激入力による組 織・細胞応答が明らかになり始め、物理療法に関連した新たな知見が数多く報告されている。また、基礎研究によって得られたエビデンスをベースとして開発さ れた物理療法機器も登場してきている。つまり、われわれ理学療法士自身が物理療法に関するさまざまな情報をアップデートする必要があり、これからを担う学 生にそのことを伝える責務がある。そのような意味で、今回、初版の内容をリニューアルした「物理療法 第2版」を発刊した。
 この第2版では、本テキストシリーズのこれまでの方針を踏襲しながら、各種の物理療法をエビデンスに基づいて解説し、さらには各種機能障害の病態を踏ま えた物理療法の実践、すなわち学生の臨床推論能力の向上を強く意識した内容構成に変更した。また、初版で盛り込まれていた「マッサージ」や「リラクセー ション」は、現在の物理療法の枠組みを考慮して、第2版ではこれらを割愛し、代わって基礎研究のエビデンスだけでなく、臨床効果も著しい「持続的他動運動 (CPM)機器」と「振動刺激療法」を追加記述した。加えて、初版から組み入れられていた「主な病態の理解」は、第2版でもこれを踏襲し、第2章「物理療 法の適応の多い病態の理解」として「炎症、組織修復、痛み(急性痛・慢性痛)」を取り上げている。特に「痛み」は物理療法が最も得意とするターゲットであ るものの、物理療法の使い手であるわれわれが痛みの病態そのものを十分に理解していないため、思うような効果をあげられていない。そこで、このことを少し でも打破したいという思いから、第2章では最新の研究成果に基づいて各種病態の解説を行い、加えて、各種病態に対する物理療法の考え方を提示している。
「物理療法 第2版」は物理療法を学ぶ学生のための初学の書としてまとめたものであるが、これからの物理療法のエビデンス構築に少しでも役立てば編集に携わった者として望外の幸せである。

(本書の巻頭言より抜粋・一部改変,文責:沖田)

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