プレスリリースPRESS RELEASE



(博士課程)医療科学専攻 理学療法学分野
 Department of Physical Therapy Science, Medical and Dental Sciences
(修士課程)保健学専攻 理学療法学分野
 Department of Physical Therapy Science, Health Sciences


2022.11.5
地域在住高齢者に対する身体活動促進プログラムは運動器疼痛の新規発生を予防する:ランダム化比較試験

研究紹介

地域在住高齢者に頻発する運動器疼痛は,フレイルや要介護発生のリスクファクターであり,死亡率の増加にも影響をおよぼすことが明らかになっています.したがって,地域在住高齢者の運動器疼痛対策は健康寿命を延伸するために重要であり,その新規発生を予防する介入戦略を開発する必要があるといえます.自験例の結果では,地域在住高齢者における運動器疼痛の新規発生には身体活動量の低下が影響をおよぼすことが示されており,身体活動促進プログラムは運動器疼痛の新規発生を予防する可能性が高いと考えられます.そこで,本研究では,地域在住高齢者に対する身体活動促進プログラムが運動器疼痛の新規発生を予防すると仮説を立て,本仮説をランダム化比較対照試験で検証しました.


研究のポイント

地域在住高齢者に対する身体活動促進プログラムは,運動器疼痛の新規発生を予防することが明らかとなりました.また,本プログラムは認知機能の改善や転倒に対する自己効力感の低下予防にも効果的であることが示されました.

研究内容

<方法>

対象:運動器疼痛を抱えていない65歳以上の地域在住高齢者79名としました.
ランダム化:対象者を運動教室への参加に加え身体活動量の向上を図る介入群(40名)と,運動教室のみに参加する対照群(39名)の2群にランダムに振り分けました.
介入内容:運動教室は6ヶ月間開催し,筋力トレーニングやバランストレーニングから構成された60分間の運動プログラムを週1回実施しました.身体活動促進プログラムは,歩数計を配布し,日々の歩数を日記に記録するセルフマネジメントを行う内容から構成しました.そして,歩数に関しては,介入後1ヵ月毎にベースライン時の平均歩数より10%ずつ増加することを目標とした指導を行いました.
評価項目:表1に示す評価を介入前後に実施しました..


<結果>
介入群40名の内1名,対照群39名の内2名が介入を完遂できませんでしたが,脱落者と実施率において2群間に有意差を認めませんでした(図1).
主要アウトカムである介入後の運動器疼痛の新規発生率は介入群5名(12.8%),対照群12名(32.4%)であり,介入群が対照群より有意に低値を示しました(図2).



副次アウトカムの結果では,数字符号置換検査と身体活動量において2群間で交互作用を認め,介入群が対照群より有意に改善していました(図3).



また,運動機能に関しては,両群ともに介入前よりも有意に改善していましたが,転倒に対する自己効力感において,介入後に介入群が対照群より有意に高値を示しました(図4).


研究の意義

本研究の結果より,地域在住高齢者に対する身体活動促進プログラムは運動器疼痛の新規発生を予防するだけでなく,認知機能や心理面も改善することが明らかになりました.以上のことより,本プログラムは地域在住高齢者の運動器疼痛の新規発生を予防する介入戦略として有効であることが示唆されました.




論文情報
Tatsuya Hirase, Shigeru Inokuchi, Shota Koshikawa, Hinata Shimada, Minoru Okita: Preventive effect of an intervention program with increased physical activity on the development of musculoskeletal pain in community-dwelling older adults: A randomized controlled trial. Pain Medicine 2022 Nov 2; pnac164. doi: 10.1093/pm/pnac164. Online ahead of print.

問い合わせ先

神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 リハビリテーション学科理学療法学専攻
平瀬 達哉(ヒラセ タツヤ)
〒238-8522 神奈川県横須賀市平成町1-10-1
Tel: 046-828-2730
Fax: 046-828-2731
E-mail: hirase-rx7@kuhs.ac.jp



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