ご挨拶

作画:かたおかようこ&ふみかず

事業推進責任者

Sawai Terumitsu

澤井 照光

長崎大学医学部保健学科長


本事業は、文部科学省「学校卒業後における障害者の学びの支援に関する実践研究事業」における「障害者の多様な学習活動を総合的に支援するための実践研究」として平成30年6月25日にスタートしたもので、全国で5つの地方公共団体と、9つの民間団体に加え、筑波技術大学、日本社会事業大学、東京学芸大学、及び長崎大学の4大学で、合計18件が採択されています。

本事業が計画された背景には、平成26年2月19日に「障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)」が発効され、平成28年4月1日に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が施行されたという流れがあり、さらに2020年に迎える東京オリンピック・パラリンピックの基本コンセプトが、(1)全員が自己ベスト、(2)多様性と調和(障害の有無など、あらゆる違いを肯定し、自然に受け入れ、互いに認め合うことで社会は進歩するのであり、世界中の人々が多様性と調和の重要性を改めて認識し、共生社会を育む契機となるような大会とする)、(3)未来への継承、の3つであることを強く意識したものでもあります。

本事業の対象者として、長崎県における現状(特別な配慮が必要な生徒:小中学校で9.8%、高等学校で3.8%、発達障害の可能性がある生徒:小中学校で7.6%、高等学校で2.3%)を踏まえ、発達・精神障害者に焦点を絞って「障害者の生涯学習活動への地域包括的支援」という事業題名で取り組んでいくこととなりました。具体的な事業内容の主体は「学校から社会への移行期」と「生涯の各ライフステージ」の二段構えで開発・実施する学習プログラムであり、共通した目的は、互いの思い・悩みを共有し、新しいスキルを修得し、自己理解を深め、より自分自身に合った「処世術」を身につけ、仲間と新たな体験をする、ということです。自分への偏見(セルフスティグマ)があればそれを軽減し、自己肯定感を高めることを目的として、先輩当事者との交流や、ピアサポーターによる講義・演習、大学生・大学院生ボランティアとの共同学習等を計画しています。学習プログラムの実施計画、具体的な内容、スタッフの活用法、進捗状況、評価方法等について審議する連携協議会の構成員には障害者当事者を含め、当事者主体の連携協議会とすることで、より効果的な実施体制の構築と連携体制の強化を推進していきたいと考えております。年度末には成果報告フォーラムを開催することで、本事業が関係者からのニーズに基づいたコーディネーターや指導者、事業者等の資質向上に寄与し、そして共生社会実現に向けての提言へ繋げることができるよう目指していきます。

本事業は、長崎大学医学部保健学科・保健学実践教育研究センターが長崎大学子どもの心の医療・教育センター及び長崎大学ICT基盤センターと協働して推進して参りますが、当事者とそのご家族はもちろん、教育、医療・療育、保健、福祉、労働等に係る数多くの関係機関の方々との密な連携が不可欠となります。変化の激しい現代社会ではありますが、障害者の皆様が夢や希望をもって生活できるように、その夢や希望を叶えるために必要となる多種多様な「学び」の機会を充実させていくことができるように、本事業が継続・発展していくことを祈念しております。皆様方のご理解とご支援を、どうか宜しくお願い申し上げます。

プロジェクトリーダー

Tanaka Gorou

田中 悟郎

長崎大学医学部保健学科 教授


文部科学省(2018)は、平成26年の障害者権利条約の批准や平成28年の障害者差別解消法の施行等も踏まえ、学校卒業後の障害者が社会で自立して生きるために必要となる力を生涯にわたり維持・開発・伸長し、共生社会の実現に向けた取組を推進する方針を示しました。このため、本事業は、様々な苦労を抱えながらも、仲間とともに、学びを通じて、夢や希望を持ち、自分らしく生活することができるように、障害者当事者の皆様を支援することを目的に実施いたします。

さて、世界保健機関(WHO,2013)は「メンタルヘルスアクションプラン2013-2020」を公表し、「地域における包括的ケアの提供」を目標の一つにしました。その実現のために、スティグマ(偏見)及び差別を低減するとともに、ケアにおいては障害を有する人を対等な協力者とみなして共に取り組むことを重視し、精神障害者のリカバリー、ピアサポーターの育成・支援、自殺予防などを推進していくことと明記しています。

また、厚生労働省(2017)は、精神障害者にも対応した地域包括的ケアシステムの構築を推進するために、保健・医療・福祉による協議の場の体制整備、住まいの確保支援、ピアサポーターの養成などを求めています。しかし、都道府県のピアサポーター養成の実施状況は52.3%であり、各自治体等で独自に行われている既存のピアサポーター養成プログラムの効果も検証されていません。

そこで、本事業では、発達障害者及び精神障害者のピアサポーター養成にも貢献できるようなプログラム(学校から社会への移行期における学習プログラムと生涯の各ライフステージにおける学習プログラム)を当事者の皆様と協働で開発し、その有効性について評価研究を行うものです。本事業は、ピアサポーターの活用を推進するための体制整備と当事者の皆様が地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすること(リカバリー)ができるような社会の構築に寄与することを目指しています。

皆様のご理解とご支援を賜りますようどうぞよろしくお願い申し上げます。