研究計画

方針イメージ
現在,がん診療体制と診断後ケアの充実は着々と進められており,特に看護学領域では認定・専門看護師制度の制定,リハ医学領域においては2010年4月の診療報酬改訂におけるがん患者リハ料の新設が特筆すべき事項としてあげられる.

 しかし,がん患者は炎症や悪液質,薬剤投与,化学療法の副作用などといったがんの直接的な影響によって疼痛や倦怠感などが生じ,これが筋力低下や運動耐容能低下といった運動機能障害へと発展する.

 また,抑うつといった精神機能障害も発生することがあり,臨床病態像は複雑である.加えて,最近は身体が不活動状態に陥ると疼痛が出現・増強することが周知の事実となっており,その事象は長期療養を必要とするがん患者においても当てはまることである. つまり,がん患者の臨床病態像は身体の不活動によって疼痛が増強すると倦怠感や抑うつといった精神機能障害がさらに増悪し,運動機能障害も顕著となり,これらの悪循環の結果,生活機能障害,すなわちQOLの低下に発展すると仮説できる.そのため,がん患者のQOLを向上させるためには,単に運動機能障害の維持・改善を図るリハ戦略だけでは不十分であり,身体・心理・社会的な側面への看護ケアや精神機能障害,生活機能障害に対するリハ戦略など,多職種連携に基づく学際的なマネジメント戦略が必要かつ重要といえる.

 一方,これまで保健学科ならびに卒後研修協力施設等でもがんを対象とした看護ならびにリハ関連研究が数多く行われており,重要知見が蓄積されている. しかし,いずれも教員等の個人研究レベルとして実践されたものである.つまり,本研究課題では,これまでの研究成果を整理・統合し,その問題点や課題を明らかにする. そして,これを踏まえてそれぞれの専門性を生かしたがん患者への関わりを明確にし,多職種連携によるマネジメント戦略の開発にチャレンジするとともに,その効果検証研究を実践する.最終的には関係機関やプログラム等との連携を図り,がん診療の中心的役割を果たす看護・リハ専門職の人材育成に貢献できる研究教育拠点を形成する.

 これらの研究成果を学部・大学院教育や関連機関・プログラム等にフィードバックし,がん診療の中心的役割を果たす看護・リハ専門職の人材育成に貢献する.最終的には,国内におけるがんに対する看護・リハマネジメントの研究教育拠点の形成を目指す.

研究課題

進行中の研究課題

「外来化学療法血液がん患者に対する運動指導の効果検証」


終了した研究課題

「がん性疼痛に対する経皮的電気神経刺激の効果検証」
「がん患者の身体・精神症状に対する運動療法効果のメタ分析」
「血液がん患者に対する低強度運動療法の効果検証」
「血液がん患者における悪液質が筋力低下におよぼす影響」。


長崎がん看護・リハビリテーションマネジメント研究会

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