プレスリリースPRESS RELEASE



(博士課程)医療科学専攻 理学療法学分野
 Department of Physical Therapy Science, Medical and Dental Sciences
(修士課程)保健学専攻 理学療法学分野
 Department of Physical Therapy Science, Health Sciences


2022.11.1
変形性股・膝関節症患者の身体活動量や痛みに対する運動療法と患者教育の併用効果ーメタアナリシスによる検討ー

研究紹介

変形性股・膝関節症に関する治療ガイドラインでは,身体活動量を増加させることが痛みのマネジメントに有用であると報告されており,その方策として運動療法や患者教育が推奨されています.一方で,これまでのメタアナリシスでは運動療法や患者教育による身体活動量の向上効果は対照群と同程度とされており,その要因としては対照群の条件設定が一致していないことが挙げられました.また,最近の治療ガイドラインでは複合的な介入が重要視されていることから,身体活動量や痛みに対する効果についても運動療法や患者教育の単独介入よりもこれらの併用介入の方が有効であることが予想されます.そこで,本研究では「保存療法が適用された変形性股・膝関節症患者に対する運動療法や患者教育の単独あるいは併用介入が無処置の対照群と比べて身体活動量の向上や痛みの軽減に有効か?」という臨床疑問の解決に向け,対照群を統制した上で無作為化比較試験(RCT)を蓄積したメタアナリシスを実施し,そのエビデンスを検証しました.

研究のポイント

変形性股・膝関節症患者に対する運動療法や患者教育の単独介入では身体活動量の向上が認められませんでしたが,運動療法と患者教育の併用により介入期間終了時の身体活動量が向上することが明らかになりました.一方で,運動療法と患者教育の単独介入と併用介入はいずれも痛みの改善に有効でした.

研究内容

<方法>
MEDLINE (PubMed),ProQuest,Scopus,PEDroの4つのデータベースを用いて2022年4月30日までに報告されたRCT論文を収集しました.そして,本研究のPICOに該当しない論文を除外し,採用論文の方法論の質(バイアスリスク)をRevised Cochrane risk-of-bias tool for randomized trials(RoB 2)にて検討しました.次に,採用論文を①運動療法の単独介入,②患者教育の単独介入,③運動療法と患者教育の併用介入に分け,それぞれの介入効果を無処置の対照群と比較しました.

 

<結果>
検索式に基づいて39,886編が抽出され,包含基準に該当した20編が採用されました(図1).なお,採用論文の内訳は運動療法の単独介入が7編,患者教育の単独介入が8編,運動療法と患者教育の併用介入が5編でした.
 

次に,採用論文のバイアスリスクを検索した結果,Low riskと判断されたのは1編のみであり,9編がSome concerns,10編がHigh riskと判断されました(図2).
運動療法の単独介入群と無処置の対照群を比較すると,身体活動量に対する効果には差を認めませんでした.しかし,痛みに対する効果は運動療法の単独介入群が無処置の対照群よりも大きいことが明らかとなりました(図3).
 

次に,患者教育の単独介入群と無処置の対照群を比較すると,身体活動量に対する効果には差を認めませんでした.しかし,痛みに対する効果は患者教育の単独介入群が無処置の対照群よりも大きいことが明らかとなりました(図4).
 
最期に,運動療法と患者教育の併用介入群と無処置の対照群を比較すると,身体活動量に対する効果ならびに痛みに対する効果のいずれにおいても,運動療法と患者教育の併用介入群が無処置の対照群よりも大きいことが明らかとなりました(図5).
 

研究の意義

本研究の結果から,保存療法中の変形性股・膝関節症患者に対する運動療法と患者教育の併用介入は身体活動量の向上に効果的であり,痛みの軽減にも有効であることが明らかになりました.以上より,保存療法中の変形性股・膝関節症患者の身体活動量や痛みのマネジメントにおいては,運動療法と患者教育を併用すること有効な介入戦略として推奨されます.


論文情報
Sasaki R, Honda Y, Oga S, Fukushima T, Tanaka N, Kajiwara Y, Nakagawa K, Takahashi A, Sakamoto Y, Morita H, Kondo Y, Okita S, Kondo Y, Goto K, Kataoka H, Sakamoto J, Okita M
Effect of exercise and/or educational interventions on physical activity and pain in patients with hip/knee osteoarthritis: a systematic review with meta-analysis
PLoS One.; 2022 (in press)


問い合わせ先
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 理学療法学分野
客員研究員 佐々木 遼(ササキ リョウ)
Tel: 095-819-7967
Fax: 095-819-7967
E-mail:
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