三次元VR環境による新しい半側空間無視の評価・訓練システムの開発と有用性の検討

Projected by: 東 登志夫

脳卒中患者の日常生活向上のために

半側空間無視(Unilateral spatial neglect; USN)とは要素的な感覚障害や運動障害を持たないにも関わらず,大脳半球病巣の反対側の様々な刺激に対して気付かない病態である.USN の症状は,日常生活の様々な場面に影響を及ぼすため,その評価と治療は脳卒中リハビリテーションにおける重要な課題となっている.


プリズム順応療法の効果と課題

現在その効果が期待されているリハビリテーションの介入方法の一つにプリズム順応療法(PA療法)がある.PA療法とは,対象者に視野を偏倚させるプリズム眼鏡を装着した状態で,ターゲットに対する到達運動を繰り返させることでシフトした視覚に到達運動を順応させ,プリズム眼鏡をはずした後にUSN の改善が認められるというものである.しかしながら適切な偏倚角度については十分に検討されていない状況にある.また,ターゲットに対する到達運動の反復は,対象者にとって退屈な単純課題であり,対象者の訓練意欲が持続する様な何らかの工夫が求められている.


「いつでも・どこでも・楽しい」
リハビリを目指して

本研究では,このPA療法の課題を解決する方法として,三次元VRによるプリズム順応反応システムを開発しその有用性を検討することである.本システムは,三次元VR上に円弧状にターゲットを出現させ,そのターゲットに対してリーチ動作を繰り返す課題を行わせる.その際の視野角度は自由に変更することができ,これによりプリズム順応を起こさせるものとなっている.また,ターゲットへのリーチの誤差(角度)は,毎回計測できるものとなっている.

課題設定画面と課題中の被検者の様子