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中野研究室

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がん性疼痛に対する物理療法の効果検証STUDY       →戻る

がん患者はしばしば重い身体的・心理的苦痛を経験します。これに対する緩和ケアは、身体症状の緩和と全人的な心理社会的ケアを提供し、患者の生活の質(QOL)を向上させることを目的としています。特に末期がん患者においては、多岐にわたる症状の中でも痛みすなわちがん性疼痛に対する治療とケアがQOL向上に重要な役割を果たしています1)。その方法としては薬物治療が中心ですが、症状が強くてオピオイドの適用となると、便秘、嘔気、嘔吐などの副作用に苦しむことも少なくありません2)。一方、非薬物療法の一つとして知られている物理療法は、薬物療法と併用することにより、薬物効果の増強や薬物量を抑える効果が期待されています。米国のAHCRPガイドライン3)でもその実施が推奨されており、具体的にはマッサージ、温熱療法、寒冷療法、経皮的電気神経刺激(Transcutaneous electrical nerve stimulation:以下、TENS)があげられています4)5)。その中でもTENSは、内因性鎮痛物質エンドルフィンの発現を増加させ、下行性疼痛抑制系を賦活化して鎮痛効果を発揮すると考えられており6)、体性痛、内臓痛、神経障害性疼痛といった多様な病態を持つがん性疼痛に対して効果を発揮することを期待しています。動物実験によれば、TENSの鎮痛効果はオピオイドにも匹敵するとされています7)。加えて、TENSは刺激部位によっては嘔気、便秘にも改善効果を発揮することが多く報告されています8)。これは感覚刺激入力による肛門括約筋の活性化やマッサージと同じリラクゼーション効果が関わっていると考えているのです。しかしながら、がん患者のがん性疼痛や嘔気・便秘に対するTENSの効果に関しては研究が少なく、特に対照群、プラセボ群、非治療群を設定したランダム化比較試験やクロスオーバー試験による介入研究がほとんど見あたらないため、システマティックレビューにおいてもエビデンスは確立されておらず9)、ガイドライン推奨レベルはC1(行うことを考慮しても良いが、十分な化学的根拠がない)です2)。そこで、がん性疼痛を持つがん患者にTENSを行い、それによって痛みやレスキュードーズの回数、鎮痛薬量、嘔気、便秘がどのように変化するかを効果検証しています。

長崎がん看護・リハビリテーションマネジメント研究会との共同研究として行っています.

1)住谷 昌彦, 四津 有人, 山内 照夫: がん患者と対症療法 26(1): 55-60, 2015.
2)二村 昭彦: 臨床栄養 127(2): 188-193, 2015.
3)Management of Cancer Pain Guideline Panel: Nonpharmacologic management: Rockville, MD: U.S. Dept. of Health and Human Services, Public Health Service, Agency for Health Care Policy and Research; 1994.
4)辻 哲也(編): がんリハビリテーションマニュアル, 医学書院, 2013, pp267-274.
5)Loh J, Gulati A: Pain Med 16(6): 1204-1210, 2015.
6)池本 英志, 砂川 正隆, 片平 治人, 他: 昭和学士会雑誌 75(2): 213-221, 2015.
7)Sluka KA, Vance CG, Lisi TL: J Neurochem 95(6): 1794-801, 2005.
8)Iqbal F, Collins B, Thomas GP: Colorectal Dis 18(2): 173-178, 2016.
9)Hurlow A, Bennett MI, Robb KA: Cochrane Database Syst Rev 14(3):CD006276, 2012.

第24回日本緩和医療学会(横浜,R1.6.21-22)での発表内容


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